東北メディカル・メガバンク機構

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  • ToMMoとは?
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  • インタビュー:清元秀泰教授
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  • 東北を世界の最先端医療のフロントラインに。
    そして地域医療に“革命”を起こす原動力に。

    Q1 : 地域医療支援の一環として、2012年10月にToMMoクリニカル・フェロー制度が始まりましたが、ToMMoクリニカル・フェロー(以下フェロー)に期待することは?

    今、フェローとして活動する医師を全国から募集しています。遠隔医療や先端医療、次世代型個別化医療を学びたい医師と被災地の医療に貢献したい医師が、診療科の壁を越えて集まってくれることを願っています。彼らがフェロー制度を使って東北で医師のキャリアを積み重ね、遠隔医療支援システムをはじめとする先端医療をToMMo(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)から他の医療過疎地域へと広めてくれることを期待しています。また、そのような未来型医療を先導できる医療従事者も育成したいと思っています。

    Q2 : 遠隔医療とは具体的にどんなことですか?

    例えば香川県の医療福祉総合特区では、離島に在住する重症の患者さんを大学病院の専門医師が遠隔医療支援システムを通して診療し、さらに訪問看護を組み合わせ、きめ細かい診療支援を行っています。また、薬局も協力して電子処方箋でお薬も管理しています。このような現地の医療関係者の皆さんの協力のもと、瀬戸内海の医師不足に苦しむ離島診療を補うシステムとして既に運用されています。 余談ですが、私は香川で医学を学び、長年、四国のへき地医療にも関わっていました。これは私がなぜ医師を志したかという原点に帰するかもしれません。その始まりは高校生時代に好きだったバイクを通じて、たまたま古本屋でチェ・ゲバラの「モーターサイクル・ダイアリーズ」を手に取ったことからでした。医師だったゲバラとハンセン氏病患者さんのエピソードに感銘を受け、ハンセン氏病療養施設のある香川県の医大(現香川大学医学部)に入学しました。医師になってからは診療船に乗って瀬戸内の離島診療のお手伝いをしたり、四国の祖谷や大歩危小歩危などの山間部への往診に行ったりしました。本当に驚くべき山中にも人が住んでいて、何時間もかけて往診に行きました。このような経験が、効率的でスマートな医療へき地への支援ができないかという考えにつながっています。

    Q3 : 遠隔医療を東北の地で導入する意味は?

    遠隔医療支援システムが東北にもあれば、例えば東日本大震災時でも混乱せずリアルタイムなトリアージ*1 を行うことができ、医療現場の混乱を最小限度に留めることができたのではないかと思います。当時もっとも早期に回復した通信手段はパケット通信やインターネット回線でした。もし遠隔医療支援システムが多くの避難所で使えていれば、全国のボランティア医師達が交通寸断された被災地まで来られなくとも、遠隔支援の形で協力してもらえたのではないかと思います。だからこそ遠隔医療支援システムは是非ToMMoでも協力して実行していきたい。災害時の備えとしても、医療過疎地域で最新の医学教育を提供する手段としても、非常に有用なシステムだと思っています。 遠隔医療支援に加えて、災害時でも医療情報が安全に保管されるシステム作りも重要です。震災時には紙カルテが津波で流され、患者の診療記録が参照できない状況下での過酷な診察でした。患者さんが過去にどのような治療を受け、普段何の薬を服用しているのか、それが電子カルテを通じてわかるようになっていたなら、混乱もなくスムーズに診察できたと思います。ToMMoがMMWIN®*2 をはじめとする医療情報のICT化事業に協力し、その早期実現を期待しているのはそのためです。 しかし、新しいシステムの普及には、システムを運用する若い力が必要です。ある一定のデバイスが普及するには、それを便利に使いこなせる存在が必要です。フェローが先達になってシステムを使いこなし、その有用性を目の当たりにした周りの医師達が使い始める。こうやってシステムが拡まればと望んでいます。全国でも世界でも遠隔医療や医療情報の統合はまだまだこれからの分野ですから、その発展に期待しています。

    Q4 : これから宮城県各地に置かれる地域支援センターでは、フェローがどんな役割を担うのでしょうか?

    地方自治体とタイアップして、住民の皆さんが参加される健康講話会や健康セミナーに、専門性を持ったフェローを順番に講師として派遣していきたいと思います。地域支援センターが健康講和会開催に積極的に関与し、フェローと地域とのつながりを強化したいです。そこでフェローがわかりやすく次世代型医療について説明し、住民の方々の理解を深めて欲しいと思います。フェローは次世代型医療を実践する金の卵ですから、地域の方々にも温かく受け入れて欲しいと願っています。

    Q5 : 2012年11月に開所した地域支援気仙沼センターのセンター長に就任しましたが、東日本大震災下の気仙沼との関わりは?

    東日本大震災直後から沿岸被災地の医療支援の現場に行きました。最初は石巻、そして気仙沼と移動し、震災数日後に気仙沼市立病院に到着しましたが、まさに野戦病院のような状態でした。ぎりぎりのところで不眠不休で働く気仙沼市立病院の医療従事者の方々、ボランティアの方々には本当に頭が下がりました。電気、水、ガソリンなどのインフラが不十分な環境に、100人を超える維持血液透析患者さんが沿岸被災地より集まっていました。しかし震災直後の過酷な状況下で血液透析を続けるのは困難でした。そこで血液透析患者さん81名を北海道に移送する計画を敢行しました。東北大学病院が起点となり、北海道の医療関係者のみならず、自治体の方々、自衛隊の全面協力の下、スムーズにミッションを遂行することができ、幸いなことに全員2011年6月までに再び気仙沼に戻すことができました。 3.11から1年半が過ぎ、東北以外では震災はもはや過去のことと思われがちです。しかし地域医療はこれからが正念場です。阪神・淡路大震災の時もそうでしたが、災害関連死は2年目以降から増えてきます。 私の神戸の実家は、阪神・淡路大震災で全壊しました。それから17年。東北大学に赴任して半年後に東日本大震災は起こりました。神戸でできなかったことを、気仙沼ではやりとげたいです。 今、気仙沼では交通インフラが不十分ですので、通院が困難な地域の方々が孤立化しているという問題があります。それだけに遠隔医療や在宅血液透析を進めて、被災地域のお役にたちたいと考えています。在宅血液透析は生命予後には良いけれど、東北で実施している患者さんはごく少数です。カナダでは在宅血液透析が盛んで、充分な腎機能を補填して生体内環境を健全に復帰させることで安全に妊娠・出産できる女性患者が増えています。通院型の血液透析よりもはるかにQOL(クオリティオブライフ)が上り、充実した社会生活ができる。これが在宅血液透析の利点です。カナダでは在宅でも安心して患者さんが透析できるように、遠隔システムを使った支援も一部実施されています。 そして、気仙沼をモデル地区に、同じことを被災地だけでなく東北の豪雪地帯でも普及させたいと思っています。冬場は雪のために自宅から通院できない透析患者さんが沢山いらっしゃり、山間部では透析のために入院されている方々が多いのも現状です。そういう方々にも新たに在宅血液透析支援ができれば、へき地医療の大革命といえるかもしれません。

    Q6 : 東北でToMMoを通じて行いたいことをまとめると?

    私は東北から医療“革命”を起こしたい。もう学生時代に憧れたゲバラを語るような歳ではないですが、ポリシーは「地域医療に“革命”を起こす」ことです。震災前よりももっと健康で長寿になれる社会を実現させたいと思っています。

    清元秀泰教授

    清元秀泰教授

    東北大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門副部門長、地域支援気仙沼センター長、統合遠隔腎臓学分野教授。香川医科大学(現、香川大学医学部)卒業。医学博士。テキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校腎臓内科フェロー、香川大学医学部助手・講師、香川大学医学部附属病院講師、東北大学腎高血圧内分泌科講師・准教授を経て、2012年東北メディカル・メガバンク機構発足に際して着任。 専門は、腎臓内科学、透析医学、移植医療および医学教育学。

    用語説明
    *1 トリアージ  傷病者の重症度と緊急性を分類し、優先して治療や搬送を行うべき対象者を判断すること。
    *2 MMWIN®  一般社団法人みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会の略称。ToMMoと協働して災害に強い電子ネットワークを宮城県全体の医療現場に構築する予定。

    構成・インタビュアー・原稿 : 影山麻衣子

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