未知のなかば 道なき未知

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第7回 身長を高くする要因は、牛乳? 遺伝? それとも?

~未知の相関関係をビッグデータで明らかに~

「牛乳を飲むと背が高くなる」
そう信じて子どものころ毎日牛乳を飲んでいた人は多いと思います。では牛乳を飲んだ子どもたちは全員背が高くなったでしょうか? いいえ、そんなことはありませんね。
では牛乳と身長はまったく関係がないかというと、そうとも言い切れないような気がします。
ウィルスに感染するとその病気になる、体をぶつけると痣になる……。
こういった原因と結果がはっきりしている事象がある一方、原因はよくわからないけれどそうなっている、という事も多いのが人間の体のしくみ。
今回は「どうしてそうなっているかわからない」をデータから解き明かそうとする試みをご紹介します。

コーヒーを毎日飲む人はxxになりにくい、とか、運動を週1回以上行う人はxxリスクが少ないなど、こういった研究結果をよく耳にします。このような研究結果は、ある特定の地域や集団に属する人々を長期間にわたって調査(コホート調査)することによって得られます。
私たちが実施しているコホート調査でも、コーヒーを毎日飲む人にはxxxが多い、のようなことを調べることができます。でも実は更にもう一歩先の事が調べられるのです。
私たちの調査では次のようなデータを収集しています。
・アンケートによる一人ひとりの長期間にわたる習慣や生活環境
・ゲノムや血液中成分のデータ
・検査による様々な測定データ
参加者の数は15万人。集められたデータはまさにビッグデータです。これをデータベースに格納して目的の情報を様々な切り口で探し出せるようにしたもの、それが統合データベースdbTMMです。

dbTMM

dbTMM では、例えば「年齢:40歳以上」「性別:男」「ヘモグロビンA1c:6.2以上」という条件を入力すると、あっという間に条件に合致する一覧が出力されます。そんなのデータベースなんだから当たり前の機能ではないか、そう思う方もいるでしょう。ただ、dbTMMのデータはなにしろ膨大です。合致する情報が数件ではデータの傾向を知ることは非常に困難ですが、数百件のデータがあればそこには何かしらの傾向が生まれる可能性があります。
そしてdbTMMならではの機能はここからです。傾向があるといっても、人間の力でひとつひとつのデータを比較し、何かしらの相関がないかを調べるには膨大な労力が必要となります。
なんとdbTMMは集められたデータから特徴的な傾向を「自動的に」見つけ出すのです。

dbTMM

先ほどの例、「年齢:40歳以上」「性別:男」「ヘモグロビンA1c:6.2以上」の集団の場合、何が見つけ出されるでしょうか? それは糖尿病の既往歴です。「ヘモグロビンA1c」の値は糖尿病に罹っているかどうかの目印であり、このdbTMMの結果は臨床的にも裏付けのある予測可能なものです。
しかし、他の条件で抽出したら? ゲノムデータを組み合わせたら? 摂取量の多い食品で絞り込んだら?
抽出する条件の組み合わせは膨大です。
とある条件で抽出した集団に思いもよらない特徴が存在するかもしれません。そしてそれが、今まで誰も気が付かなかった病気の原因の発見に結びつくかもしれません。

コホート調査の継続に伴いdbTMMのデータはどんどん積みあがっていきます。病気の原因や治療法を臨床的なアプローチではなくデータから読み解く。dbTMMがそれを可能にします。

昔からよく言われている「牛乳を飲むと背が高くなる」
牛乳の効果を最大限に高めるための謎のパーツは、ゲノムなのか運動なのか、一緒に食べる何かなのか? はたまた実は牛乳と身長はあまり関係がないのか? dbTMMから大きなヒントが得られるかもしれません。

(担当:是枝幸枝)

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