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2013.06.10

石巻赤十字病院でALSOとBLSO(産科救急の教育プログラム)を開催しました。

2013年5月25-26日、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、産科救急に携わる医療関係者に向けた教育プログラムであるALSOとBLSOを、宮城県石巻市の石巻赤十字病院で開催しました。ToMMoは昨年も同病院でALSOとBLSOを主催しています。

当日は石巻地域を中心に受講者が集まりました。東日本大震災下で活動した医療関係者が多く含まれています。ALSOは、アメリカで分娩に関わる多くの医療関係者が受講しているプログラムで、日本でも普及活動が進められています。

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さて、妊婦の救急搬送は、日本のどこで起きても不思議ではありません。また出生直後の新生児の一割は蘇生に関連するサポートが必要であり、1%はサポートなしでは生存できないと言われます。そのため救急救命士についても、お産の仕組みとサポート方法を知り対処法を身につけるための教育プログラムが渇望されています。BLSOはまさしくその必要に応えるプログラムです。

BLSOは、ALSOを各国の実情に合わせたプログラムへと組み替えたもので、日本では、お産に立ち会う可能性がある救急医療者を意識して工夫を凝らしたプログラムに仕立てています。特に病院到着前に出産が始まった場合や妊婦が交通事故に遭遇した場合への対処が意識されています。今回のBLSOには救急救命士や救急医、救急外来の看護師が参加し、救急搬送中に出産に遭遇した参加者もいました。

参加者からは「東日本大震災下では妊婦の救急搬送を行ったと聞いている。搬送に自分が関わった時、お産への対処がわからないと困ると思い、BLSOに参加を希望した」との声が聞かれました。

これまでに開催されたBLSOでは、搬送に働く救急救命士と妊婦の受け入れ先の病院の医療スタッフが同じプログラムを学ぶ事で、スムーズな情報伝達を助ける効果があったと言われています。

BLSOでは出産の仕組みを映像や模型を用いて教わり、妊婦に特有の診察方法について理解し、正常分娩の対処を習います。臍の緒の切り方や胎盤の処理方法といった分娩介助や新生児の蘇生、妊婦の蘇生、大出血への対応を学びました。参加者は講義直後に習った内容を実習し、AED、喉頭鏡や吸引具、アンビューバッグといった器具も扱います。「周産期傷病者チェックシート」を用いて重要な点を意識しながら理解を深めました。

実習では少人数のグループ毎に指導者が付きます。指導者は受講者の手技や対応を見て、妊婦への配慮の仕方や聞き取り時の注意点を細かく助言しました。医療チームとしての対応も意識され、チームのメンバーが共通で認識できるような指示の仕方を心がけるべきと語られました。

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救急車を用いた実習では、狭い車内での出産に対応するため、経験に即したノウハウが伝えられました。救急搬送の際に受け入れ先の病院に伝えておくべきことを踏まえて、電話連絡の模擬演習をしました。

ALSOでは助産師や産婦人科医、救急医が参加し、難産や難しい胎位のお産、妊娠の合併症への対処が教えられました。

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26日午後にはDMATの森野一真氏を講師に迎えた特別講演があり、災害医療の基本や、災害時の情報伝達の難しさが経験談を交えて語られました。災害に対応するためには、経験を記録に残し、協力する事につきるとのことです。

ToMMoは今後もALSOやBLSOを開催し、お産に関わる医療関係者の技能向上の機会を提供する予定です。また、このような教育コースを通じて、地域で活躍する医療関係者とのネットワークを醸成し、事業全体のさらなる推進に貢献することが重要であると考えています。

ALSOおよびBLSOの共催は石巻赤十字病院、NPO法人周生期医療支援機構(OPPIC)、NPO法人みやぎ産婦人科医療情報ネットワーク協議会、米日カウンシル(US-Japan Council) TOMODACHIイニシアチブでした。

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